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「福祉の思想」糸賀一雄

「福祉の思想」糸賀一雄 著 NHKブックス


引っ越し作業の中で本棚を整理していて見つけた
古本屋で買ったけどまだ読んでなかった本です。

著者は福祉関係の教科書にも出てくる歴史上の大物です。

当時、精神薄弱と呼ばれていた方々をサポートするべく、
近江学園やびわこ学園の建設に大きな力を発揮し、
障害者の実態の研究や、その支援について大きな実績を残した方です。

この本の第1刷は1968年、私の持ってる本は1996年の第70刷・・・すごいなあ。
著者は1968年にお亡くなりになっています。

私の生まれる前には現在の福祉のおおすじの方向性は定まっていたようです。
逆に言うと、福祉はあまり進歩していない?

精神障害者の分野を考えてみるに、知的障害者の研究のなされたこの本の内容と
40年の時間差をもっても追い付いていないような感じを受けました。
(私が不勉強なだけかもしれないけれど)
新しい概念が出てきてはいても、大きな流れというのはあるのだなと思いました。

途中で引用されていた一文なのですが、両手両足の無いまま生まれてきたという、フランス人のドニーズ・ルグリーさんの手記の一部なのですが、

「私は、何の権威の名において、奇形児として生きる権利を否定されることがあるだろうか。私の生涯は非常に幸福であり、そして私は人間の役に立ったことまであると思う。人間の価値は、その精神と人格にある。その肢体にあるのではない。もし私みたいな子どもを殺してもよければ、私よりもっと不幸な人間がたくさんいるのに、それらの人たちをも殺してよかったであろうか」

文脈からいって、療育により障害者も生き生きと暮らせるのだということを言いたいところなのでしょうが、「精神と人格」に問題がある(問題があるというのも問題なのだけれど)精神障害者は、まだこの時代にも、理解されづらいものだったのだろうなと思います。そして現在も理解されにくいところです。

40年の時間を経ても、変わっていないものの一端です。

私個人を振り返るに、「障害者を見る」という視点から「各個人を見る」という視点への切り替えと、個人を束ねて社会を作っていくというのはどういうことなのか考えねばならないと思いました。

実践が伴わないまま、本をいくら読んでも仕方がないわけでもありますが・・・。
今後の課題です。

あさ: 山ほどの病気と資格と怨念と笑いで腹と頭を抱えてのたうち回っております。何であるのかよくわからない死に直面しつつも、とりあえず自分が死んだら、皆が幸せになるように、非道な進路を取って日々邁進してまいります。
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