「精神科医は腹の底で何を考えているか」

ひさびさに一気に読み終えました。昼寝していた分を取り戻すがごとく。

「精神科医は腹の底で何を考えているのか」春日武彦 著

きわめて読みやすい本でした。精神科の医師の内心をつづった、精神科にかかっている私としては、先生はこういうことで悩んでいるんだなあと、いろいろ思い出したりしました。

一方、PSWとしての立場にも同様なことが言えることも多く、考えさせられました。

統合失調症の患者の特性に関する記述でそうだよなあと思うことがいっぱいありました。

たとえば・・・p.151より・・・

治療を受けて妄想が払拭され、落ち着いたもののいまひとつ覇気や生彩を欠く状態の、つまり陰性症状を呈している状態の彼ら患者は往々にして日常生活の送り方がぎこちない。どうやら彼らは普通とか当たり前といった状態が分からない傾向にある。そこでそうした日常感覚の欠落を補うべく、彼らは妙に論理的となる。彼らは支離滅裂でも出鱈目でもない。「言わずもがな」とか暗黙の了解といったものへのセンサーが消失してしまったまま、あらためて世界を理解しようとする。けれども世の中の営みの多くは、あえて誰も口にしないような常識やルールに司られている。それを無視してしまっては、スムーズに毎日を過ごすことは出来まい。

なんてところは自分の経験と照らし合わせて思い当たることしきり。

あと、統合失調症は99%治癒しても、残りの1%の蝦瑾が大いに問題になるというくだり。
p.178あたりからの記述です。
私も(このブログでも)ツボを外しまくっているとおり、微妙なズレは「ひゃーやっちゃった」です。
ああ・・・、私も勘違いしてる微妙なところが社会復帰を阻んでるのだろうか?

世間的にうまく渡っていくための微妙な1%。
のどから手が出るほど欲しい1%でもあります。
「寛解」と簡単に言われるけれど、その実質、内容に触れる記述だと思いました。

地道に堅実に誠実・・・なことが今の社会では重要視されないとのこと。
不器用でも緩慢でも生きていくのに不都合がない環境が欲しいと思いました。

と、いうわけで、この本は面白かったです。

・・・書いてあることは、ひょっとしたらあたりまえなことなんだけれど、それをあえてとらえなおして、見つめる作業は貴重だし、有用だと思いました。

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